少子化問題はもはや「遠い未来の話」ではなく、私たちの日常を脅かす現実的な危機です。2025年現在、日本は出生数が過去最低を更新し続け、結婚数の減少がその根本原因となっています。
この記事では、厚生労働省の最新人口動態統計を中心に、データから見える「結婚離れ」の実態を深掘りします。なぜ若者が結婚を遠ざけ、少子化が加速するのか? そして、私たちに何ができるのか? 一緒に考えてみましょう。
1. 2024年の衝撃:出生数が70万人を割り込み、過去最低を更新
2025年6月、厚生労働省が発表した2024年の人口動態統計(概数値)によると、日本人の出生数は68万6061人で、前年比約4万1000人(5.7%)減少しました。これは1899年の統計開始以来、初めて70万人を下回る水準です。合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの平均数)も1.15と過去最低を更新し、人口維持に必要な2.1を大幅に下回っています。
この数字は、国立社会保障・人口問題研究所の推計(中位推計)で想定されていた2039年よりも15年早いペースです。2025年1〜3月の出生数は16万2955人(前年比4.6%減)と、減少傾向に歯止めがかかっていません。
総人口も2024年末推計で1億2380万2000人(前年比55万人減)と、14年連続の減少です。
以下に、近年5年間の出生数推移を表でまとめました。減少の加速ぶりが一目瞭然です。
年次 | 出生数(日本人) | 前年比減少率 | 合計特殊出生率 |
---|---|---|---|
2020年 | 84万832人 | -2.9% | 1.33 |
2021年 | 81万1622人 | -4.3% | 1.30 |
2022年 | 77万747人 | -4.3% | 1.26 |
2023年 | 72万7277人 | -6.3% | 1.20 |
2024年 | 68万6061人 | -5.7% | 1.15 |
(出典:厚生労働省人口動態統計概数値。2020〜2023年は確定値、2024年は概数値)
この表からわかるように、2023年以降の減少率は5%を超え、少子化が「加速度的」に進んでいることがわかります。コロナ禍の影響で出会いの機会が減ったことが一因ですが、根本は結婚数の低迷にあります。
2. 結婚離れの現実:婚姻数が低迷し、未婚率が急上昇
日本では「結婚しないと子どもを持たない」文化が根強く、出生数の減少は婚姻数の減少と連動しています。2024年の婚姻数は、厚生労働省の推計で47万5000組前後と見込まれ、前年比で微減または横ばいにとどまっていますが、長期トレンドでは明確な下落です。2023年の婚姻数は約48万組で、戦後最低水準を更新しました。
特に、20〜30代の未婚率が急増しています。2020年の国勢調査では、30歳時点の未婚率が男性47.1%、女性34.6%と、過去最高を記録。2025年現在、この傾向はさらに進み、50歳時点の生涯未婚率が男性28%、女性18%に達する予測です(国立社会保障・人口問題研究所推計)。
以下は、婚姻数の推移表です。バブル期のピークから半減近くに落ち込んでいるのが見て取れます。
年次 | 婚姻数(組) | 前年比変化 | 備考 |
---|---|---|---|
2019年 | 53万4983組 | -0.5% | コロナ前ピーク |
2020年 | 52万5100組 | -1.8% | コロナ影響開始 |
2021年 | 51万2256組 | -2.5% | 行動制限で低迷 |
2022年 | 50万3000組 | -1.8% | 回復兆しも弱い |
2023年 | 48万0000組 | -4.6% | 戦後最低更新 |
2024年 | 47万5000組(推) | -1.0% | 2025年推計 |
(出典:厚生労働省人口動態統計。2024年は日本総研推計)
この「結婚離れ」は、単なる「恋愛離れ」ではなく、経済・社会構造の変化がもたらしたものです。次で詳しく見ていきましょう。
3. 結婚離れの原因:経済不安と価値観の多様化が若者を追い詰める
なぜ若者が結婚を避けるのか?
2025年の最新調査(内閣府・厚生労働省)から、以下の3大要因が浮かび上がります。
(1) 経済的負担の増大
- 住宅・教育費の高騰:都市部の家賃上昇(東京圏で平均10万円超)と教育費(私立大学で1人あたり1000万円以上)が、子育て世帯を圧迫。みずほリサーチの分析では、住宅の狭さが「理想の子どもの数」を実現できない要因の1つです。
- 非正規雇用の増加:20〜30代の非正規率は約40%。不安定な収入で「結婚資金」を貯められない。東洋経済の調査では、若者の4割が「経済的に結婚できない」と回答。
(2) 仕事と子育ての両立難
- 長時間労働とジェンダー格差:男性の家事・育児時間は1日平均2時間未満(国際最低水準)。女性の負担が集中し、共働き世帯の7割が「仕事と育児の両立が難しい」と感じています。
- 晩婚化の進行:平均初婚年齢は男性31.1歳、女性29.7歳(2023年)。コロナ禍で出会いが減少し、婚活アプリの利用が増えても「質の高い出会い」が不足。
(3) 価値観の変化:結婚を「必須」と思わない時代へ
- NHKの意識調査(2024年)では、20代の3割が「結婚は個人の選択」と回答。一方で、「不本意未婚」(結婚したくてもできない)が4割を超え、自己責任論は的外れです。プレジデント誌の特集では、「結婚市場に残る男性の質の低下」(低収入・非モテ層の増加)が指摘されています。
これらの要因が連鎖し、婚姻数減少→出生数減少→少子化加速の悪循環を生んでいます。第一生命経済研究所の分析では、2025年の出生数はさらに65万人程度まで落ち込む可能性があり、低位推計を下回る「超少子化」シナリオが現実味を帯びています。
4. 少子化の危機:経済・社会への波及効果
このままでは、2030年代に「ラストチャンス」を逃し、若年人口が倍速で減少。2060年には総人口8700万人、高齢化率40%超の「超高齢社会」が待っています。
労働力不足でGDP成長率は年平均0.5%未満に低下し、社会保障費はGDPの25%を占める予測です。単身世帯の増加(2040年で4割)も、孤独死や精神疾患を増やします。
5. 希望の光:政府の対策と私たちにできること
政府は2023年の「こども未来戦略」で、児童手当の拡充(高校生まで支給、第3子以降3倍化)や育休法改正(2025年10月施行)を推進。経済支援強化で出生率1.8目標を目指します。個人レベルでは、企業に柔軟な働き方を求めたり、地域の婚活イベントに参加したり。結婚を「幸せの選択肢」として再定義する意識改革が鍵です。
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